【入門】iPS細胞は何がすごいの?問題点は何?

この記事は2019年5月8日に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

こんにちは。

渡辺亮平です。

本記事では、iPS細胞の基本的な部分をお話します。

この記事をチェックしていただくだけで、

・iPS細胞ってつまりどういうこと?
・iPS細胞があると何が良くなるの?
・iPS細胞の抱える課題点って何?
・iPS細胞はこれから何を研究するの?

といった部分が大まかに掴めるかと思います。

再生医療の入門について、『再生医療って何?幹細胞治療の何が良いの?』記事もあわせてご覧いただくと理解が進みやすく、おすすめです。

INDEX
  1. iPS細胞って何?
  2. iPS細胞があると何が良いの?
    1. 『多くの』難病患者を救える可能性
  3. iPS細胞の抱える課題点とは?
    1. そしてiPS細胞の進む道が決まった
  4. おわりに。再生医療は「研究」と「実用」の混合

iPS細胞って何?

2006年、京都大学の山中伸弥(しんや)先生たちが作製に成功した、万能細胞のことです。

人間の細胞は、通常は

・皮膚なら皮膚
・心臓なら心臓
・血管なら血管

と、役目が決まっている細胞で作られています。

ですが元を辿れば、精子と卵子が受精して1個の細胞だったときのように、身体には「万能細胞」と呼ばれる、すべての元となる細胞も存在するのです。

「皮膚なら皮膚」だったはずの細胞が、ちょっと手を加えるだけで「万能細胞」に生まれ変わる(初期化される)ことを山中教授らは発見しました。

つまり、「とても単純な手順で万能細胞を作り出せるようになった」のがiPS細胞です。

もっと詳しく言うと?

体細胞(胎児線維芽細胞=人間の多くを占める細胞です)をES細胞のような多能性幹細胞へと初期化したものをiPS細胞と呼びます。
たった4つの遺伝子を強制的に発現させることで、ただの体細胞が多能性幹細胞になることが発見され、ノーベル生理学・医学賞受賞となりました。

iPS細胞があると何が良いの?

iPS細胞は人類史に残る発見とすら言われていますが、iPS細胞があることで世の中の何が良くなるのでしょうか。

『多くの』難病患者を救える可能性

万能細胞は、人間の身体がもともと持っているものです。

iPS細胞が発見される前から、幹細胞治療といって万能細胞(幹細胞)を取り出して、適切な方法で移植したり、戻すことができれば病態が改善する期待があることは分かっていました。

※幹細胞治療について詳しくは『再生医療って何?幹細胞治療の何が良いの?』でも説明しています

しかし毎回、患者さんから細胞を取り出してシャーレで培養することは大変です。1回1回の手術が大変で、とても普及は難しい

また骨髄、歯髄、脂肪などいろいろな箇所から幹細胞は取り出せますが、疾患や臓器によっては、適していない細胞もあります。

しかし、iPS細胞へ初期化された細胞なら、文字どおりどのような臓器にでもなれる上、毎回患者から細胞を取り出すことなく量産化(スケール)ができるのではないか?と期待されています。

iPS細胞のはじめての臨床研究として、2014年、高橋政代先生たちが自家細胞(患者自身の細胞)のiPS細胞を使った網膜疾患患者への細胞シート移植が成功しました。

病気を試験管やシャーレ上で再現できる

iPS細胞で『病態解明のための研究が加速する』と言われています。

iPS細胞が登場する前は、動物実験で、似たモデルとなる病気を用意しなければなりませんでした。

通常、製薬会社が新薬を開発する際は、動物実験や臨床試験を繰り返します。動物実験を行うということは

・期間も
・かかる費用も
・倫理的検討も

重要な検討項目です。

これら研究開発から薬などの実用化にいたるまで、内容によって10年~20年の歳月と、数百億円から数千億円の研究開発費がかかるといわれています。

また多くはマウスなどの小動物で病気を再現して病気の発症メカニズムや効果のある物質を特定します。ですが小動物では効果があったものが、人体になると効き目があらわれない場合などもあり、研究開発を断念するケースも少なくないということです。

しかし、iPS細胞があらわれたことで光が差します。

病気の患者の細胞から作ったiPS細胞は、病気の状態を非常にかんたんに再現することができました。

特定の病気を細胞レベルで再現ができれば、それに対して効き目のある薬を特定するスピードもグッと早くなります。

動物に対する擬似的な病気でなく本物そのものの病気状態を細胞レベルで作ることで、有効性も格段に上昇します。

さらには動物実験を減らすことは倫理的な観点からもとても有効です。

iPS細胞は、先ほど挙げた

・期間も
・かかる費用も
・倫理的検討も

すべてをクリアするポテンシャルを持つという、非の打ち所が無い発見なのです。

例えば京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の妻木範行先生たちは、高脂血症の治療薬スタチンが、軟骨無形成症に対して効き目があることを発見しました。

この発見には、患者から採取した細胞から造ったiPS細胞で病気を再現し、とても速いスピードで、大量に実験を行えたことがとても有効でした。

この功績は、Natureという権威ある科学雑誌にも掲載されました。

iPS細胞の抱える課題点とは?

イメージ写真です。

iPS細胞ではじめて患者さんの手術が成功した例として、先ほど自家細胞(患者自身の細胞)のiPS細胞移植をご紹介しましたが、

この成功例は大きな前進であるとともに、iPS細胞の課題点が明るみに出ました。

それは「自家細胞(患者自身の細胞)」を取り出すところからスタートした、という点です。

患者ごとにiPS細胞を作製して、移植に適した細胞まで分化させるには、膨大な時間と費用がかかることがわかりました。

このまま自家細胞の利用を続けるのでは大量生産は難しく普及も困難だと言わざるを得なかったのです。

そしてiPS細胞の進む道が決まった

iPS細胞は課題点さえ克服さえすれば、正真正銘「人類にとっての希望」となるでしょう。

そこで次の方針が決まりました。

他家細胞(他人の細胞)は通常、他人の患者に投与すれば拒絶反応が起きます。

しかし、白血球のもつ血液型を合わせれば、拒絶反応が抑えられます。

iPS細胞はここに注目し、白血球の持つ血液型の数だけiPS細胞の種類をあらかじめ用意し、ストックしておく計画をスタートしました。

白血球の血液型って?

赤血球の血液型といえば「A・B・AB・O型」の4種類ですが、実は白血球にも血小板にも、血液型があるということが分かっています。白血球の血液型は実に数万通りを超えます。

型の種類だけ用意するといっても、その数は数万通り。かんたんなことではありません。

まずは日本人に多い型の上位から揃えていく計画です。日本人に一番多い型を1つ用意するだけで、日本人の約2割がカバーできるとのことです。

もっと詳しく言うと?

他家細胞で免疫拒絶反応のない白血球抗原(HLA)型という白血球の血液型を適合させたiPS細胞をストックしておく、という計画を進めています。

日本人にもっとも多い型である「HLAホモ接合型」の同種iPS細胞を1株用意できれば日本人の約20%がカバーできるそうです。

HLAタイプの上位75種をカバーできれば、日本人の実に8割がiPS細胞移植可能となります。

骨髄バンクでも、拒絶反応の起きにくい型を持っている方を募集しています。

おわりに。再生医療は「研究」と「実用」の混合

iPS細胞のニュースをテレビなどで見ていると、「再生医療はまだまだ実験段階で、これから研究が進む分野なのか」と思われる方も多いと思います。

再生医療に臨床研究の分野が多いことは間違いありません。たしかにiPS細胞を使った臨床研究に私たちが参加することは、なかなか叶いません。

ですが、自家細胞(自分の細胞)を使った幹細胞治療なら、いますぐに東京や大阪にあるクリニックで受けることが可能です。

私たちが健康であるために行える治療の選択肢は、数多くあります。これは日本が、世界でも数少ない再生医療立国だからこそ享受できる恩恵です。

国外の富裕層が、日本へ大金を持ち込んで幹細胞治療ツアーを行う理由もそういうことです。

あなたも、幹細胞治療を受けようと思えば受けられる環境にあるんですね。これって実はすごく、幸運なことだとわたしは思います。

この機会に、再生医療に興味を持っていただけたなら幸いです。

お願い

上記内容は諸説ある部分、見解が分かれる部分も含まれます。
また、誤りと思われる内容があれば、コメントでのご質問ご協力をぜひよろしくお願いいたします。

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