
▼準備が6で、実践4
ひとつのお芝居を完成させるとき、「自分で準備するパート」と「みんなで合わせるパート」の比率はどれくらいだと思いますか?
大まかには、次のような感じです。
- 自分で作るパート:6割
→台本解釈、役作り、練習
- みんなで作るパート:4割
→演技合わせ
実は「自分で行う準備」のほうが6割と、多い比率になります。
「自分で行う準備」は簡単です。
- 役
- 目的
- 言動
を準備して、台本を覚えて、自分の中で演技の大まかな流れを想像しておくことです。
▼みんなで作るとはどういうことか
何をしたら「みんなで作る」と言えるのでしょうか?
各自で演じ合って、必要な箇所を調整する?
いいえ、これだけでは少しぼやけています。ここがぼやけたままだと「みんなで集まってるはずなのに、各自が個別練習しているような状況」に陥りかねません。
改めて各自で準備するものは次のとおりです。
- 役
- 目的
- 言動
これらを各役者が集まって演技を合わせたとき、調整(変化)が必要なのは、どの部分でしょうか?
「みんなで作る」ときに調整するものは、このうちの「言動」のみです。
「言動」は目的達成のために取る行動です。言動とは観客が見る「もっとも表層的な面」です。
目的達成のために取りうる言動は多数あります。そのため言動を変更したところで、目的さえブレなければ問題ありません。だから言動がもっとも動かしやすい、調整しやすい部分なんです。
つまり「みんなで作る」とは「役、目的を変えずに、言動を変えること」です。
▼みんなで作るときのテクニック:見せ方
あえてテクニックという言葉を使います。
見せ方とは、「お客さんからはどう見えるの?」「お客さんにどう見せたいの?」という部分に特化した考え方です。
いちばんシンプルで確実なテクニックをお伝えします。
それが「選ぶ作業」です。
例えば、たらこスパゲティを想像してください。
たらこスパゲティを作る時に必要な材料は何でしょうか?
- パスタ
- たらこ
- バター
- 大葉
- 海苔
など
当たり前にこういった材料を「選び取る」と思います。
では、たらこスパゲティの材料を知らない人や、「選び取る」力が足りない人はどうなるでしょうか?
- ごま油?
→バターの代わりになるかな…?
- わかめ?
→海苔と似てるし良いよね…?
- うまい棒めんたいこ味?
→めんたいこの味するし行ける…?
といった「選び取るミス」を犯します。
お芝居でも料理でも、この選び取る力が足りない人は、取捨選択ミスを犯してしまうんです。
「美味しいたらこスパゲティの完成像」が想像できるからこそ、私たちはパスタのレシピを選び取ることが出来ます。
では、お芝居ではどうでしょうか?「おもしろいお芝居の完成像」が想像できるでしょうか?
例えば料理を知らない人が、たらこスパゲティを作るにあたって、うまい棒めんたいこ味を入れたとしましょう。
「あれ?なんか違うなぁ」と思ったとき、うまい棒めんたいこ味を、うまい棒たこやき味に変えるなどの試行錯誤をしてしまいます。
でも、そうじゃないですよね。根本から変えないといけないんです。
お芝居でも「実は根本から変えなきゃいけない表現」を「なんか微調整だけで行ける気がする」と固着してしまうことが、「選び取る力が足りない」ところの恐ろしさなのです。
「選ぶ作業」が一番のテクニックだと思っておいて下さい。
がんばりましょう!