この記事は2019年5月17日に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

こんにちは。

渡辺亮平です。

最近ニュースなどでもよく見かけるようになった、中国が推進している「一帯一路」という政策。

一帯一路とは、一言でまとめると「中国が世界をリードするためにつくられた経済圏構想」です。

このように言われても、まだ納得がいかないかも知れません。

そこで、この記事では

「一帯一路ってどんな構想なの?」

という疑問を持っているあなたに向けて、

・一帯一路の目的
・一帯一路構想を推進するための組織
・一帯一路に参加するメリット
・一帯一路に参加するデメリット
・一帯一路に今後日本は参加するのか?

などの情報を紹介してきます。

この記事は5分くらいでカンタンに読めて、一帯一路という構想について十分に知ることができますので、ぜひご一読を。

INDEX
  1. わかりやすく解説! 一帯一路は中国が進める世界の貿易を活発化させる政策
  2. わかりやすく解説! 一帯一路の目的
    1. 1.中国国内の経済成長を促進させる
    2. 2.中国を一帯一路参加国との外交で有利に立たせる
    3. 3.人民元を国際化させる
  3. わかりやすく解説! 一帯一路構想を推進するための組織
    1. 1.アジアインフラ投資銀行(AIIB)
    2. 2.シルクロード基金
  4. わかりやすく解説! 一帯一路に参加するメリット
    1. 融資された資金で国内のインフラを発展させられる
  5. わかりやすく解説! 一帯一路に参加するデメリット
    1. 1.中国から融資された資金を返せない可能性が高い
    2. 2.軍事・外交を中国に支配されるリスクがある
  6. わかりやすく解説! 一帯一路に今後日本は参加するのか?
  7. まとめ

わかりやすく解説! 一帯一路は中国が進める世界の貿易を活発化させる政策

結論から言うと、一帯一路は
中国が主導する、世界の貿易を活発化するためのプロジェクト」です。

一帯一路は現代版シルクロードと言われ、影響が及ぶ範囲は主にユーラシア大陸となっています。

「一帯」とは陸路での貿易ルートのこと。

この一帯は、中国西部から中央アジア、そしてヨーロッパ各国へと続く「シルクロード経済ベルト」と名付けられ、陸上での貿易活発化を目指しています。

「一路」とは海路での貿易ルートのこと。

この一路は、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島沿岸部、アフリカ東海岸をつないだ「21世紀海上シルクロード」として名付けられ、海上での貿易活発化を目指しています。

中国がユーラシア大陸にある各国に融資をしてインフラ整備を進め、陸海両方での貿易ルートを発展させることで、長期的に自国や関係国の経済成長を実現させようとしているのです。

一帯一路では、具体的に以下のようなインフラ整備を進めようとしています。

・道路
・港湾
・発電所
・パイプライン
・通信設備

ユーラシア大陸各国でこれらのインフラを整えることによって、金融、製造、電子取引などでの産業の活性化を実現させる計画です。

次の項目で、中国が一帯一路プロジェクトを進める具体的な理由を紹介してきますね。

わかりやすく解説! 一帯一路の目的

中国が一帯一路を進めている具体的な理由は、以下のものになります。

1.中国国内の経済成長を促進させる
2.中国を一帯一路参加国との外交で有利に立たせる
3.人民元を国際化させる

これだけザックリとみると、中国が自国の影響力を拡大したいという意図がわかりますね。

ここから、それぞれについて詳しく解説していきます。

1.中国国内の経済成長を促進させる

一帯一路の目的の一つは、貿易ルートを整備することで、
「中国国内の経済成長を飛躍させる」というものがあります。

中国経済は、これまで30年以上続いていた高度経済成長の時代が終わって、低成長の時代に向かっています。

中国には、ユーラシア大陸の各国の貿易ルートを強化することによって、自国の経済成長を活発化していこうという思惑があるのです。

特に、地方経済は、発展著しい沿岸部に比べて未だに発展しているとは言えない状態です。

沿岸の都市部の発展が終わった後に、なんの手立ても打たないと中国国内の経済は停滞してしまうのは、目に見えている状態。

この中国地方部とユーラシア大陸各国とをつなげることで、地方部の経済発展を目指そうとしているのです。

一帯一路には、中国地方部と沿岸都市部をつなげる目的もあります。

中国は、一帯一路プロジェクトで地方の道路・鉄道・通信などのインフラを整備する計画を持っています。

そして、インフラが整備されることで、都市~地方へのヒト・モノ・カネの移動を自由にして、経済的に未発展な地方部との格差を是正しようとしています。

2.中国を一帯一路参加国との外交で有利に立たせる

一帯一路には、中国の外交的影響力を拡大させる目的があります。

ユーラシア大陸のインフラ整備を中国主導で行うことで、恩恵を受けている関係国への発言力や、経済的な支配力を大きくすることができます。

ユーラシア大陸にある各国のインフラ整備に必要な資金は、主に中国からの融資でまかなわれているのです。

融資を受けている限りは、各国もある程度は、中国の意向に従う必要が出てきます。

3.人民元を国際化させる

一帯一路には、中国の法定通貨「人民元」を国際的に利用される通貨にするという目的があります。

現在は、国際的な取引の場で使用されている通貨は米ドルです。

中国は、一帯一路によって自国を中心にした経済圏をつくることで、貿易の決済時に人民元を使用する機会を増加させようとしているのです。

人民元が国際的に使用される通貨となれば、それだけ中国の経済的な覇権も強固になりますね。

わかりやすく解説! 一帯一路構想を推進するための組織

一帯一路プロジェクトを推進するために、中国は以下のような組織を設立しました。

1.アジアインフラ投資銀行
2.シルクロード基金

この2つは、一帯一路参加国のインフラ整備の推進を目的に設立されています。

それぞれについて、詳しく紹介していきますね。

1.アジアインフラ投資銀行(AIIB)

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、中国が主導して2015年に設立された国際金融機関です。

このAIIBは、アジア各国の開発を目的に、融資や専門的な助言を行う機関として
複数の国によって設立されました。

類似した国際機関として、アメリカが主導するIMF(国際通貨基金)や日米が主導するADB(アジア開発銀行)などがありますね。

AIIBは、複数の国によって設立されたといっても、各参加国の出資比率を見れば、中国がおよそ30%を占めており、一国だけで非常に大きな影響力を持っています。

(引用元http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2016/2016win11web.pdf

AIIBでは、重要な議決事項は「参加国の出資比率で合計75%になるように賛成が必要」というルールがあります。

中国以外の参加国の出資比率は合計で70%。

つまり、出資額30%を占める中国の賛成がないと重要事項を決められない組織となっているのです。

この点も、一帯一路によって中国が国際的な影響力拡大を図ろうという意図が見て取れますね。

2.シルクロード基金

シルクロード基金は、2014年末に、中国がアジアのインフラを整備するために創設したファンドです。
ファンドとは…投資家や富裕層から集めた資金を運用する投資のプロのこと

シルクロード基金はAIIBとは異なり、中国が一国で創設した組織です。

シルクロード基金の活動内容は、中国独自の判断で投資先を決めて、融資を行うことです。

シルクロード基金には、中国国家開発銀行などが出資をしており、その規模は日本円に換算して4兆4600億円という非常に巨大なものになっています。

中国は400億ドルを出資してシルクロード基金を設立し、「シルクロード経済ベルト・21 世紀海のシルクロード」沿線国のインフラ建設・資源開発・産業協力等のプロジェクトに投融資支援を提供すると宣言した。

引用元https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Researchers/report/tanaka_osamu/pdf/2015/tanaka_report150218.pdf

わかりやすく解説! 一帯一路に参加するメリット

中国以外の国は、なぜ一帯一路に参加しているのでしょうか?

そのメリットをまとめると

「融資された資金で国内のインフラを発展させられる」

というものがあります。

以下詳しく紹介していきます。

融資された資金で国内のインフラを発展させられる

ユーラシア大陸にある発展途上国にとっては、一帯一路に参加することで、

「他国からの融資によって自国のインフラを発展させられる」

というメリットが出てきます。

自国の経済力だけでは十分に整備することができない後発の発展途上国でも、他国からの融資でインフラを先進的なものにすることができるなら、ぜひとも参加したいものですよね。

インフラが発展すれば、海外企業にとっても魅力的なビジネス環境となり、より多くの外資を誘致することも期待できます。

わかりやすく解説! 一帯一路に参加するデメリット

一帯一路プロジェクトは、参加国にとってただメリットだけがあるわけではありません。

いくつかの要素がデメリットになる可能性が高いのです。

一帯一路に参加するデメリットをまとめると

1.中国から融資された資金を返せない可能性が高い
2.軍事・外交を中国に支配されるリスクがある

というものになります。

それぞれを詳しく紹介していきます。

1.中国から融資された資金を返せない可能性が高い

一帯一路に参加する国は外資を誘致することによる自国のインフラ発展を目的としています。

この外資とは、主に中国が出資する資金になります。

この中国からの融資は、高額の利子があるのです。

融資を受けた国は、インフラの整備をしたはいいものの、経済成長が上手くできなかった場合には、積み重なった利子のついた借金を返すことができなくなるリスクを抱えているということに注意をしておかなければなりません。

2.軍事・外交を中国に支配されるリスクがある

先に紹介しましたが、一帯一路に参加する国は、中国から融資された多額の借金によってインフラを整備します。

この借金を返すことができなくなると、場合によっては整備したインフラを中国に差し押さえられてしまうリスクがあるのです。

例えば、スリランカは、2017年には、中国からの融資によって建設したハンバントタ港を中国国有企業へ引き渡しました。

これはスリランカが、中国から高金利の借金を返済することができなかったために起きた出来事です。

ハンバントタ港は中国に99年という期限付きで譲渡されましたが、これは実質的に中国が保有する軍事拠点になってしまったことを意味するのです。

わかりやすく解説! 一帯一路に今後日本は参加するのか?

では、日本はこの一帯一路に参加するのでしょうか?

結論から言うと、

今のところは「参加しない」と見ていいでしょう。

理由としては、以下のようなものが挙げられます。

・ユーラシア大陸内部の国に日本企業が進出していないから
・アジア開発銀行(ADB)ですでに発展途上国に出資しているから
・軍事的に摩擦を起こしている中国を警戒しているから

まず、日本にとって一帯一路に参加しても経済的なメリットはあまり存在しないのです。

さらには、尖閣諸島などで軍事的な摩擦を起こしている中国主導のプロジェクトに参加することは、日本の安全保障戦略に沿わないということもあります。

以上のことから、日本は一帯一路プロジェクトへは参加しないと判断できます。

ただ、日本経済の今後の景気動向によっては、経済界の後押しなどで参加をする可能性も捨てきれません。

まとめ

この記事では、中国が推進している巨大経済圏構想「一帯一路」についての以下の情報を紹介していきました。

・一帯一路の目的
・一帯一路構想を推進するための組織
・一帯一路に参加するメリット
・一帯一路に参加するデメリット
・一帯一路に今後日本は参加するのか?

これから、ますます存在感の増す一帯一路プロジェクトから今後も目が離せません。