
これもまたお芝居で非常に大切な内容です。
リアルとリアリティの違いは何だと思いますか?
ぜひ考えてみてください。
・・・
自分の中で違いは見つけられたでしょうか。
リアル=現実
リアリティ=現実感
リアルを「現実」と言い表したとき、リアリティは「現実感」と表現できます。
例えば、ジュラシックパークは世界でも人気の映画です。恐竜が生き生きと暴れまわります。
でも現実に恐竜はいません。そうです。恐竜は「リアル」ではなく「リアリティ」の世界の住人だったんです。
リアリティとは、「虚構の世界だけど、本当のように見える」ことです。
同じように「無造作ヘア」と「ただの無造作な髪」が違うことは分かるでしょうか。
- ただの無造作な髪=リアル(本当)
- 無造作ヘア=リアリティ(本当のように見える嘘)
そしてお芝居では、リアルではなくリアリティを追い求める必要があります。
▼リアルとリアリティをどう分けるか?
リアルとリアリティを区別するとしたら、どう定義したらいいでしょうか?
「迫力があるかどうか?」でしょうか?いいえ違います。
「虚構か、現実か?」だいぶ近いです!
例えば、お芝居上で人が刺されたとしましょう。
本当に人を刺すでしょうか?いいえ、刺しませんよね。
ひとつの答えは「現実で起きることをするか、しないか」です。現実で起きることをするのがリアルで、現実で起こらないことをするのがリアリティと言ってもいいです。
- 現実で起きること=リアル
- 現実で起きないこと=リアリティ
▼なぜ、リアリティを演じる?
なぜお芝居では「現実で起きるリアル」を演じるのではなく、「現実で起きないリアリティ」を演じる必要があるのでしょうか?
それは、リアルの延長線上にあるのは、リアルでしかないからです。
例えば、「リアル」で恋人と喧嘩したとしましょう。険悪なムードになり、2人は黙り込んでしまいました。
黙り込んでから5分・・・30分・・・とうとう1時間が経過しました。
果たしてドラマ番組でこのシーンが放送されるのは「リアルで面白い!」となるでしょうか?ならないはずですよね。
リアリティがあるとドラマになる!
いっぽう、リアリティの延長線上にあるものがドラマと呼ばれます。
例えば「みにくいアヒルの子」はリアルではなかなか起こり得ないことで、物語の中だけで起きることです。
同じように、台本:星に願いをの台本で、星の精霊が現れるのはリアリティ(嘘)だというのはみんな理解しています。
もしも、星の精霊ではなくただの変質者が現れたとしたら、それはそれである意味ドラマチックですが、その先には逃げ惑って警察に通報するというリアルがあるだけです。
台本:星に願いをの冒頭で「さむ〜」と声を出すシーンも、リアルなら自分にだけ聞こえるように口元で「さむっ」と呟けば済む話ですよね。でもそうしないのは、お芝居として成立しなくなるからです。
リアルとリアリティは相容れません。
例えばファンタジー(リアリティの世界)から突然リアル(現実世界)に戻ってくると、気色悪さを感じませんか?
「劇場版ドラゴンクエスト」のラストシーンでも、ファンタジーだと思って観ていたものが実は現実世界だったと明かされますが、ここで多くの方が落胆しています。(参考:ドラゴンクエスト ユア・ストーリーのレビュー)
「いかにうまく嘘をつくか」「いかに嘘を本当だと信じさせるか」がリアリティです。
▼嘘をつくことに抵抗はあるか?
リアリティを演出するということは、「いかに本当っぽい嘘をつけるか」の腕にかかっているということですよね。
聞こえは悪いですが、結婚詐欺師などが得意とする分野です。
そう考えると、「いや、わたしは嘘はつきたくないです!」と思う方もいるかもしれません。
でも、考えてみてください。
ひとつの考え方として、嘘というのは包丁と同じです。
包丁はとても便利で、なくてはならない道具です。でも、使い方を間違えると捕まりますよね。
嘘も同じです。うまく活用するとエンターテイナー、名役者などと言われます。
しかし、嘘を悪用すると詐欺師です。
この「本当みたいな嘘をつく」ことを大前提にしないと「ドラマチック」が生まれないんです。
台本も、役も、アクションもリアクションもその間にあるレスポンスもすべて「本当みたいな嘘」です。役者であれば、嘘を正しく活用しましょう。
※アクション、リアクション、レスポンスについてはまたの機会に説明します
がんばりましょう!