【第8回目その5】【重要】演出家の具体的な仕事[限定、ダメ出し]
演出家の仕事

台本を読んでいて、不思議なことってありませんか?

例えば、台本:星に願いをでは、それぞれが自らの目的をもって台詞を言います。

なのに、「3人」と指定しているところは演技を合わせなきゃいけないんですよ。

台本:星に願いを

3人 お星様、お願いします!!!

こういうのを「お芝居の嘘」とは言いますが、そもそもなぜ合うのでしょう?なぜ合わせなきゃいけないのでしょうか?脚本家側の都合が入っていると思いませんか?

ここで学ぶのが「演出」という概念です。

INDEX
  1. ▼演出とは何か
  2. ▼すべては台本を活かすために存在する
  3. ▼よくない役者と演出家の関係
  4. ▼「物語を面白くする」具体的な行動とは?
  5. 演出家の仕事「限定」と「ダメ出し」
    1. 1.限定(制限)
    2. 2.ダメ出し

▼演出とは何か

演出とはなんでしょう。

演出とはバランサーです。目的としては、常に全体を見ようとします。1つの役だけを集中して見ることはありません。全体のバランスを見る役目を持っています。

この演出家が演出プランといって、お芝居の方向性を決めます。「ここはきっかけ合わせをしよう」と決まったりします。

きっかけ合わせが出た過去記事:【第5回その5】【重要】きっかけとは何か

なお、業界全体で起きやすい勘違いが「演出家の言うことがすべて」という誤解です。そういった現場もありますが、本来は異なります。

演出家の立ち位置を次で見てみましょう。

▼すべては台本を活かすために存在する

お芝居をピラミッドで見てみましょう。といっても、二段しかありません。

偉さピラミッド

【台本】

【スタッフ・裏方・技術・制作・演出家・出演者】

どんな時でも、ヒエラルキーの頂点に立つのが台本です。「台本を基準にみんなでお芝居を組み立てましょう」が出発点だからです。

そして、制作班(プロデューサー)というのも役者と横並びの存在です。現場入りすると、プロデューサー>>>役者という力関係がありそうな気がしますが、本来は対等です。

もちろん先輩・後輩はあります。しかしヒエラルキーの上下はありません。上下関係がいきすぎると逆に太鼓持ちになってしまいます。

▼よくない役者と演出家の関係

「役者と演出家は対等」と認識していないと、おかしなことが起きます。

それは「役者が演出家に教えを請うようになる」ことです。

「やってみました。この演技でいいですか?(演出さん、あなたが判断して貰えます?)」と演出家に聞く役者がいますが、それは下策です。

本来は「やってみました。おかしなところがあれば言って下さい(さあ演出さん、どういう風に私を活かしてくれるの?)」が望ましい姿です。

これを「無人島のサバイバル」で例えると、次のとおりです。

役者たちが食材を採って、演出家が調理を担当することになりました。

役者たちは山菜などをとり、続々と演出家のもとに食材を運んできました。

役者A:これ持ってきましたけど……食べられると思います?分からないですけど……

演出家に聞く役者がいました。これがNG例です。

役者A:これは食べられる物です!調理お願いします!

と自信を持って言い切れる役者が、よい例です。

つまり、役者たちは「使える演技」を演出家のもとに並べるのであって、「使えるかどうか分からない演技」を持ってきて演出家の判断に委ねるのではない、ということです。

なお脚本家と演出家の関係性は「漫画家」と「原作者」の関係と似ています。すべてはチームプレーです。物語を最大限に面白くするためにすり合わせします。

▼「物語を面白くする」具体的な行動とは?

演出は、バランスを取る仕事だと言いました。

バランスを取るとは、具体的にはどういうことを指しているのでしょう?

  • 物語を成立させること?
  • 物語の破綻を防ぐこと?
  • 物語を面白くすること?

どれも正解です!

じゃあ例えば、「物語を最大限に面白くする」とは、誰から見て最大限でしょうか?どのくらいやれば最大限面白いと言えるのでしょうか?難しい問題ですよね。

それは次のような条件によって、まったく異なってきます。

  • どんな出演者がいる?
  • どんな環境で演じる?
  • 上演まであと何ヶ月?
  • どんな美術やセットが用意できる? など

演出家の仕事「限定」と「ダメ出し」

上記の条件に応じて、柔軟に「物語を成立させるために・より面白くするために」演出家がおこなう具体的な行動があります。それは次のとおりです。

演出家の具体的な行動
  1. 限定(制限)
  2. ダメ出し

1.限定(制限)

制限とは、「あなたの役は、この幅からこの幅で演じてくれ」という指示です。スコープを絞ることです。

制限とは「決めること」ではありません。あくまで幅を狭めることです。

なぜ制限が必要なのでしょうか?それは制限しないと、役ができる行動は無限にあるからです。

台本は文字情報ですから、行間を読み解くほど、いろいろなことが出来ます。

べつに大事な話をしているときに鼻をほじってたっていいんです。

でも中には「その行動はとっちゃダメでしょ」ということはありますよね。だからこそ演技の幅を「この範囲からこの範囲でお願い」と、ある程度制限してあげる必要があるのです。

台本:星に願いをにある「3人、声を合わせて→モテたい!モテたい!モテたい」というセリフも制限の一種です。

2.ダメ出し

そして制限をしてからでないと出来ないことがあります。それが「ダメ出し」です。

制限をあらかじめ設定しておかないと、極めてレベルの低いダメしか出せません。

なぜなら、制限のない中、自由な発想で演技を行うと、そこに対するダメ出しは「後出しじゃんけん」でしかないからです。

仮に「3人、声を合わせて」という制限が無い状態で役者みんなが思い思いに演じてから、「ストップ。そこは一緒に声を合わせてほしかったなぁ〜」などとダメ出しされると、「それを先に言えよ!」となりますもんね。

以上、今回は演出・演出家の話でした。

引き続きがんばりましょう!