▼そもそも、演技で使う声って?
実は、声にもいくつかの種類があります。
お芝居をするにあたっては、どんな劇団や養成所でも「基礎トレーニング・基礎練習」がありますよね。
基礎練習ではア・イ・ウ・エ・オと大きく口を開けて発音することが多いです。
そんな基礎練習のなかで、「自分はどの位置が出やすい声なのかな?響きやすい声なのかな?」を探ります。
でも、「いい声ってどこ?」と言われると、なかなか言葉では説明しづらい部分だと思います。
そこで第1回目は、「どのようにしたら狙いの声が出るか」を実際のトレーニングを交えて、お伝えします。
▼3種類の「声」
大きく区別すると、声には次の3種類があると思ってください。
声は「響かせる位置」があります。頭のどの部分で響かせるか?によって声の種類が変わります。
1.頭部共鳴(ヘッドボイス)
- 頭の後ろで出す音のこと
主にオペラ歌手、歌を歌う際のヴォーカルなどで使う音です。お芝居ではあまり使いません
2.ミックスボイス(ミドルボイス)
- 頭の真ん中より前で出す音のこと
ミドルボイス、ミックスボイスとも言うようだけれどわたしの歌の先生はミドルボイスと呼んでいました。この図解、わかりやすい。 pic.twitter.com/Kp34MSiLAn
— ann* (@a107___) August 28, 2018
主にヴォーカルが使う音です。歌では使いますが、お芝居ではあまり使いません
3.顔面共鳴(お芝居はコレ!)
- 頭の前面、つまり顔面で出す音
これこそが、主に演技で使う音です!
顔面共鳴は「声が届きやすくなる」ので、普段の会話でも有効活用できます。
▼顔面共鳴を出すには?
お芝居では「顔面共鳴」を活用します。
顔面共鳴を理解するために、「頭部共鳴(ヘッドボイス)」と比較してみましょう。
例えばオペラ歌手が歌うときは、頭頂部(ヘッド)がいちばん音が響いているイメージがありませんか?
歌ならこれでいいのですが、顔面共鳴の場合はオペラのような声の出し方はしません。※絶対に使わないというわけではないのですが「とりあえず頭頂部は使わない」と割り切るレベルでOKです
お芝居をするにあたっては顔面共鳴こそ「あなたが出すべき声」と考えてほしいです。
声優として声をマイクに乗せるときも、この顔面共鳴を使うことが非常に多いです。
なぜ顔面共鳴が良いかというと、「狙った場所に声が届くから」です。「指向性のある声が出せる」からです。詳しくはまたどこかで説明します。
さて、この顔面共鳴を出すためのトレーニングをお伝えします。
ハミングを毎日しよう
ハミングというトレーニングを毎日してみましょう。
正しいハミングをすれば、早い人で2週間、遅くても3ヶ月もすれば効果を実感できます。
まず口は閉じた状態で、唇の力だけを抜きます。よだれが出るくらい弛緩させます。
そこからウ゛ーーーと地声を出します。
唇に指をかるーく当ててみてください。唇が非常に細かく振動する声があるはずです。鼻がむずがゆくなるレベルで共鳴する声があるはずです。
「この声がいちばん振動してるな〜」という部分を探し当てたら、つぎは唇を開いて声にしてみます。
ヴ〜〜〜〜〜 → ア〜〜〜〜〜と声にしてみます
実はこのときに出ている声こそが「もっとも使える声」です!
ハミングの応用
通常のハミングに慣れたら、「鼻先がよく震える声」を探してみましょう。
喉で発生していたヴーーーという「音源」を、少しずつ「鼻の奥」へ持っていってみてください。
上手くいくと、唇も鼻先も、どちらも非常に細かく震えます。共鳴している状態です。
これは鼻の横にある空洞「副鼻腔」が共鳴しているということです。副鼻腔の共鳴ができると、さらに声の幅が広がります。
ちなみに、鼻先を振動させるときに、唇の振動が止まるのは間違っています。最初は難しいので、基本のハミングからやってみてください。
一度「これだな」というのさえ分かれば、あとは出来るようになるので、焦らなくてオーケーです。
ドヤ顔トレーニング
「ドヤ顔で喋る」というトレーニングもあります。これは非常に有効です。
ためしにドヤ顔をしてみてください。
こんなふうにドヤ顔をすると、顔面の皮が後ろへつっぱりませんか?
例えば「太鼓の表面に張った革」や「ギターの弦」は、ピンと張った状態でないと音が鳴りませんよね?それと同じで、顔面の皮もつっぱってあげる必要があります。
また、ドヤ顔をすることで目に力が入りませんか?もっと正確に言うと、「目の奥側に力が入る感覚」がありませんか?眼球の奥には視神経があって、そこにも空洞があります。ここに力を入れてピンと張ることによって、顔面共鳴の「いい音」が出るようになります。
実はこの2つが、「顔面共鳴を出す」ための条件です。
繰り返しになりますが、この顔面共鳴は、お芝居で「特定の場所に音声を飛ばしたい」「マイクに綺麗に音声を乗せたい」ときに有効です。
F1レーストレーニング
音を「特定の場所に飛ばす」のに有効なトレーニングです。
頭上で「F1レースカー」が走っているイメージで声マネをします。
①後ろから走ってきて、②頭上を通り過ぎて、③前へ走り抜いていく感じ
何m先まで走り去っていったかも、音声で表現します。いまどの辺にいるか、指を指して追いかけてもOKです。
声の位置は、鼻より高いところをキープします。鼻より低い位置にならないように注意します。(また説明します)
ぜひ、練習してみてください!
「輪郭のない、ぼやけた声」と言われる方へ
以上のトレーニングを行うと、演技に使えるだけでなく、日常生活でもいいことがあります。
例えば「ぼやけた声に聞こえる」と言われたことがある人(まさに私です)は、だんだんと言われなくなる期待ができます。
わたしの場合、「地声に方向性がなくて、全体にぼわーんと広がった声をしている。ぼやけた声と言われることもあるし、誰に向けて話してるか曖昧でよくわからない、と言われることもある声ですよね」と指摘されました。まさにそのとおりです・・・
いっぽう「方向性のない声は、落ち着きや安心感を出すには適している」らしいのですが、「演技をしたい、ハリも方向性もある声を出したい」と考えるならこのトレーニングで声の方向性を作っていった方がいい、との話でした。
一緒にがんばりましょう!
続きます