▼制限時間を意識しすぎない
演技には多くが制限時間が設けられています。
制限1分のものもあれば、劇であれば2時間を超えないなどあるでしょう。
表現の時間が30秒〜1分30秒などと決められていると、どうしても慌てた演技、素早い場面の切り替えなどをしてしまいがちです。
しかし慌てた演技をしてしまうことで、焦る気持ちが観客に伝わってしまったり、落ち着きのない演技、あるいは前回も言ったとおり、コントっぽく見えてしまうなどの危険性があります。
そこで、余裕をもって1分30秒以内に収めるために、尺そのものは短くします。
そして尺そのものを短くしたとしても、身体の表現を大きくゆっくりと行うことで、尺の短さは気にならなくなります。
さらに、ここにファンタジー色を加えるなら、後半に向けて身体の表現、物語の進行をふわぁ〜っと上げていくことでファンタジックになりやすくなります。
▼「ファンタジー」と「お笑い」の合いの子を作るには
今回わたしの作った「クリスマスの表現(1分30秒以内)」は、
- 前半がファンタジー
- 後半がお笑い
と考えて演じてみました。
この合いの子をうまいこと成立させるにはどうしたらいいのでしょうか?
お笑いとファンタジー、両方の空気を混ぜてしまうのは悪い例です。
空気をあいまいにすると、観客としては「いまどのジャンルの劇を見ているのか?」が分からなくなり、もやもやしたまま観劇が続きます。
前回もお伝えした、「カレーとシチューとポトフの間の料理」にも似た、謎の料理感が残るだけです。
そこで、空気を明確に分けてあげればよいのです。
途中から、明確な切り替えポイント(きっかけ)を作り、それまでファンタジーだった空気感を一気にお笑い方向に振り切ります。
次のように再構成してみました。
朝起きると子犬が家にいる
↓
大喜び。子犬と一緒に寝る
↓
翌朝起きると犬が大きくなってびっくり。たてがみも生えた(ファンタジー)
↓
犬が背中に乗れと言うので乗る
↓
舞台からはける
↓
シロにまたがり競馬場を走り抜ける。競馬実況つき(一気にお笑い方向へ)
↓
見事優勝し賞金獲得
これで、だいぶラストが笑いやすくなったはずです。
以上のように観客にとって「いま自分は何を観ているのか?」をはっきり、くっきり、分かりやすくさせてあげることが、お芝居の分かりやすさ・面白さに直結します。
「分かりやすいは正義」です。
▼見得を切りすぎない
もうひとつポイントがあります。
ファンタジーの世界の住人が、観客のことを真正面から見る(見得を切る)と、一気に「現実世界」感が増します。
例えば、テレビの中で演じていたはずの人物が、突然自分と目があって話し出すと、不安や違和感を覚えるものです。ドッキリの企画などにありそうですね。。。
そのため、「観客に向かって説得する」「観客に向かってリアリティのある話をする」といった目的以外では、正面ではなく横か、すこし斜めを向いて演技をします。
また正面を向きたくなっても、姿勢と向き(膝の向き)を少し正面からずらしてあげるだけでも効果があります。膝の向く方向は、意識の向く方向と同じです。
▼削ぎ落とす作業がお芝居を洗練する
お芝居では表現したいこと、観客に見せたいものが沢山出てきます。
そんな時こそやってほしいのが、削ぎ落とす作業です。もったいないと思うかもしれませんが、お芝居を洗練させるための大事な作業です。
ひとつ試してみてほしいのが、「一番やりたいことをまず削いでみる」です。
試しに一番やりたい部分を削いでみて、物語として成立しなくなったら、「一番やりたいこと=大切なことだった」と分かります。
いっぽう削いでみても破綻しなければ、「物語に欠かせない大切なシーンではなかった」ということです。しかも一番肝心だと思う部分を削いでみても、「たいがい物語は成り立つ」ものです。
がんばりましょう!