▼演じるとは何か
演じるって、いったい何でしょう?
「演じる」とは何をすることを指しているのか分かりますか?すこし絞ってみましょう。
例えば、「肉じゃが」という料理を聞くと、何を準備して、どう料理すれば完成するか分かりますか?
→分かると思います。じゃがいも、たまねぎ、肉などを用意しますよね。
ではもうひとつ、、、「ンキャパ」という架空の料理を聞いて、何を準備して、どう料理すれば完成するか分かりますか?
→これは分からないですよね。たとえ検索しても出てこないです。何を準備して、どう調理するのかも分からないはずです。
「演じること」も実はこれに近いです。「演じる」と一言にいっても、
- オペラ、大衆劇、ナレーション、声優など
いろいろあります。ジャンルは近いのに、それぞれ準備するモノや演じる手順が異なるものです。ひとくくりにするとものすごい迷走します。
この「ゼロから始める声優」記事シリーズでは、「舞台芝居」に絞った話をします。
※声優は、舞台芝居から派生した演技です。声優になるための基礎固めとして、舞台芝居を勉強します。
▼役者とは何か
続いて、舞台芝居における役者とは何かを考えます。
役者はずばり「自分以外の何かを演じること」と定義します。
いっぽう「自分自身を演じる場合」は、漫才とかコントと呼ばれます。
そして台本に出てくる人物を演じるということは、「一定の時間から、一定の時間までのあいだを切り取ること」と言い換えることもできます。
▼役とは何か
「役者」と「役」は違います。
役者は、役を演じる人を指します。
役は、台本のなかで生きる人物を指します。
そして役とは、次の3つを持っている人間だと覚えてください(重要)
- キャラクター(性質)
- パーソナリティ(性格)
- 人間関係
1.キャラクター(性質)
キャラクターとは俗に言う性質です。
「不変のもの」とも言えます。
例えばルパンの服装、年齢、次元大介といった相方キャラクターなどは不変のもので、そうそう変わることはありませんよね。
2.パーソナリティ(性格)
パーソナリティとは俗に言う性格です。
「変わる可能性のあるもの」とも言えます。
例えば、ふだんは温厚な主人公が、家族を殺されるなど許せない事件に遭遇して、復讐を誓う。これも主人公が変化したということですよね。
3.人間関係
最後は人間関係です。
役にはかならず人間関係がついて回ります。「誰とも一切関わりを持たない人物」が物語に登場することはあり得ません。※もしもそんな人物が過去の物語にいたなら、教えてください。
これら、
- キャラクター(性質)
- パーソナリティ(性格)
- 人間関係
を持った役が動くから、ストーリーは進行するんです。
ところで、「人間関係」で勘違いしていけないことがあります。
例えば「先生と生徒」という役があった場合、人間関係はなんと答えますか?
「先生と生徒という人間関係です」と答えるのは大きな間違いです。先生と生徒は、ただのロール(役)です。
- その役は、どんな人と接しているのか
- その役は、どんな風に接しているのか
「役Aは、役Bとどう接するか?」が人間関係です。ある人物が違う人物と会話したときや衝突したときに、どんな行動を取るか?が人間関係です。
先生と生徒というロールだけでは、生徒が「おい、センコー!」と呼ぶのか、「ねぇ、先生?」と呼ぶのか、分かりませんよね。
人間関係が変われば呼び方ひとつが変わります。人間関係が違って見えてきます。
こういった違いが、あとになって「先生と生徒は、実は親戚だった・・・」などと判明してストーリーが展開したりもします。
「役」を考えるときのコツ
役のキャラクター、パーソナリティ、人間関係を設計するにあたっては、台本をパラパラと読みながら「私の演じる役って、こんな人物なんだろうな〜」と想像するところから始まります。
普通は、演出家や先輩から「あなたの演じる役はこんなキャラクターで、こんなパーソナリティを持っていて、こんな人間関係を持っているよ」などと親切に教えてくれることはありません。100人いれば100通りの答えがあるからです。だから、役は持ち物や服装や口調など、「すでに決まっているもの」を除けば「自分で考えて設計する部分」なんです(一緒に考えるくらいは、してくれるかもしれません)。
そうして考えていると「よく分からん!!」と混乱する場面も出てくると思います。
そんなときに便利な方法があります。
それは「この役は、知り合いの誰に似てるだろう?」と当てはめてみることです。
身近な誰かに役を当てはめることで、どういったメリットがあるのでしょうか?
役はよく、「サイコロ」に例えられます。
「サイコロの面」を実際に見てみると分かるのですが、「表の3面は常に見えるけど、裏に隠れた3面は見えない」ですよね。
役も同じです。性格、性質、人間関係の3面は舞台上で演じている限り、見えます。
しかし、その役の裏側に隠れた信念や核心は?そうです、裏に隠れて見えないんです。
お芝居においても、その隠れて見えない面が一瞬、コロッと見えて、またすぐに見えなくなることがあります。
普段は温厚な人が、とある出来事で激怒しました。その人はなぜ怒ったのだろう・・・?とか。これが物語の核心に迫ったりするものですよね。
この人間の持つ「表と裏(多面性)」を、「違和感なく繋ぐ役作り」がかんたんに出来るのが、「実際にあなたが知っている人物」なんですね!
実際に生きている人間を参考にすれば、架空の人物をゼロから作るよりも矛盾がおきづらいです。
出演者全員の「役」を把握する必要はあるか?無いです
「すべての役のキャラクター、パーソナリティ、人間関係を把握しなければいけないのですか?それは大変すぎる!」と思う方もいるかもしれません。
いいえ、すべて把握する必要はありません。自分の演じる役だけ把握していれば大丈夫です。
現実世界でも考えてみてください、他人がどんな人で、どんな性格を持っていて、どんなことを許せない人物で、どんな人と距離が近いかなんて、すべて把握しているでしょうか?
していないはずです。それが「分かる!!」と言うなら、とんだ勘違いか、エスパーです。
家族の頭のなかですら100%理解している自信はないと思います。まして家族でもない他人では、分かる必要もない、といったところです。
台本がなくとも「役」が集まればストーリーは生まれる
台本とは、あくまで「お芝居」の部品の1つです。
たとえば、台本に登場する「男女3人」が、台本無しにエレベーターへ乗ったらどうなると思いますか?
実はこれだけでもストーリーは生まれます。
なぜなら、それぞれの役(性質、性格、人間関係)が作用しあうからです。
役Aと役Bの仲が悪かったなら、エレベーター内でも距離を離すかもしれません。満員のエレベーターだったら距離を離せなくて嫌な顔をするかもしれません。
それを知っている役Cがいたら、二人を見てニヤニヤするかもしれませんし、いたずら好きならばちょっかいを出すかもしれませんよね。
▼おわりに
以上の「キャラクター、パーソナリティ、人間関係」という分解方法を知らないと、自分の役が「なぜうまく行っていて、なぜうまく行っていないのか」を振り返ることができません。
料理に例えると、「なにか味が物足りないな」と感じたとき、「砂糖が足りないのか?塩が足りないのか?」がまったく分からないのと同じです。
がんばりましょう!