今回の「きっかけ」も重要な要素です。常に頭に入れておいて下さい。
きっかけとは何でしょうか。
物事を始める手がかり。糸口。また、原因や動機。「事態打開の切っ掛けをつかむ」「ふとした切っ掛けで知り合う」(goo国語辞典)
ほかにもきっかけのことを「キュー」「合図」とも言い換えられます。
お芝居で言うきっかけとは、文字どおり台本のどこかに現れる「きっかけ」です。そのまんますぎますね・・・。
以前、他人から受けた言動で目的の変更を受ける(成功・失敗・邪魔)と言ったことを覚えているでしょうか?
→【第3回その3】【最重要】目的(メソッド)を設定するメリット
「他人から受けた言動で目的変更を受ける」とは、もっと具体的に言うと「役は、他人から受けた”きっかけ”で目的の変更を受ける」ということです。
「きっかけ」の例
目的変更の前には、かならずきっかけがあります。
きっかけは、かならず台本のどこかにあります。
しかもきっかけは、「誰かの発言」の場合もあれば「モノがきっかけになる」場合もあります。
「わたしの演じるこの役は、いったい誰の、どの発言がきっかけで目的の変更を受けたんだろう?」と探してあげます。
例えば、台本:星に願いをで流れ星が落ちることは立派なきっかけです。
流れ星が落ちることで、みんなの注目は一気に星に集まり、願いごとをするようになりました。それぞれの役が持っていた「目的」が強制変更を受けているのが分かるでしょうか?
他にも「ねぇ、なんで私たち腐れ縁3人で星眺めてんの?」のセリフの「ねぇ、」もきっかけの一つかもしれませんよね。
3:(星を眺めながら)ねぇ、なんで私たち、腐れ縁の幼馴染3人で星眺めてんの?
この場合「ねぇ、」の部分で役1,2の視線が役3に集まっていないと不自然なのが、分かるでしょうか。
どこがきっかけか?というのもまた正解は無いんです。分かりやすいきっかけもあれば、お芝居の掛け合いのなかで決まっていくきっかけもあります。
きっかけを意識することでテンポが良くなる!
この「きっかけ」が頭に入っていると、どんな良いことがあるでしょうか?
さきほど、役3のセリフ「ねぇ、」がきっかけかも?という話にあったとおり、「セリフを全部聞いてから納得した表情をする」とか「セリフを全部聞いてから返事をする」のでは、どうしてもテンポが悪くなりがちです。そうではなくて、どこかにきっかけがあるはずなんです。
- きっかけで注目が集まる
- きっかけで言葉をさえぎる
- きっかけで表情が凍りつく
- きっかけで反論をしたくなる
そのセリフ、ぜんぶ聞いてから返事するのが自然ですか?きっかけを探してみましょう!
難しい課題「結果として揃う」
台本:星に願いをで「モテたい!モテたい!モテたい!」というセリフを揃えるのは、お芝居の嘘です。
※お芝居の嘘・・・お芝居や舞台の都合上でつく嘘。大事なセリフを言うときに観客のほうを振り向いたりするのもお芝居の嘘
3人 もてたい!もてたい!!もてたい!!!
現実世界では声が揃うというのはなかなか起きません。でも、お芝居では台本に書いてあるのだから、揃えなければなりません。
「台本に書いてあるんだから仕方ない。揃えるか」と声を揃えるのもいいですが、もう一歩踏み込んでみてほしいことがあります。
それは「役それぞれが思いのままに動いた結果、たまたま3人声が揃った」という瞬間をうまく演じてみることです。
これができると、最高にかっこいいです。
映画などでもよくありませんか?
バラバラの目的を持つ複数の主人公が、紆余曲折を経て「ひとつの目的」に合流する瞬間があります。
最高にカタルシスを得られる瞬間ですね。
「きっかけ合わせ」というテクニック
お芝居の嘘として、合わせるところはきっちり合わせる必要があります。
台本:星に願いをで「モテたい!モテたい!モテたい!」というセリフを揃えるのもきっちり合わせた方がかっこいいです。
そんなときに役立つのが「きっかけ合わせ」です。
例えば「あ、ながれぼし!」の「し」で振り向いて手を合わせるとか、一拍置いてから手を合わせるとか、役者や演出家が相談しあって作戦を決めます。
この場合は観客にはほぼ関係のない、役者同士が示し合わせるきっかけなので、「演出上のきっかけ」とも言います。観客には見えない、裏のきっかけということですね。
付いてこられているでしょうか?引き続き、がんばりましょう!