▼目的があってはじめて他が存在する
お芝居でもっとも重要なのは「目的」です。
じつは、目的のほかに「理由」と「言動」という要素があります。
- 目的
- 理由
- 言動
この3つは連動しています。
これらは三すくみの関係です。この三角形のバランスが取れている(成立している)ことが、「物語が成立している状態」と言われます。
理由には感情も含まれます。言動とは「どんな言葉や方法や手段を取るか?」です。
- 目的
- 理由(感情)
- 言動(方法、手段)
目的がしっかり決まっているのに「理由がない」とか、「言動が目的に沿っていない」などは、バランスが取れていないということです。
- 目的は「〜させるために」と言い換えることができます
- 理由は「〜だから」と言い換えることができます
- 言動は「目的を達成するために取る」すべての方法、手段のこと
ここで改めて混乱しないように注意したいことがあります。
例えば、台本:星に願いをの「(星を見て)うん、きれいだね。」という役1の言動(言葉)が出た目的は何でしょうか?
「きれいだと思ったから」言ったのではありません。
目的はかならず「〜させるため」という形にならなければいけませんし、「目的なし」もあり得ません。
▼どのように目的を設定しよう?
「(星を見て)うん、きれいだね」の目的を設定するとき、これ単体を見ただけでは「どうしてこの発言をしたのか?」が分からないと思います。
そんなときは、過去のセリフにさかのぼって考えてみます。
夜 土手を歩いている3人組。どうやら部活帰りのようだ
1 あ〜、遅くなっちゃったね。
2 さむ〜!
3 あ、ねぇ空見てみて。
2 …わ〜、すごーい!
1 湿度と気温が低いし、今日は月もでてないからね。
3 街灯もないし。
2 田舎も捨てたもんじゃないよね。
1 うん。きれいだね。
まずは何でもいいので「これかな?」と思った目的を当てはめてみましょう。
例えば、冒頭の役1「遅くなっちゃったね」の目的を「役3のせいで帰りが遅くなったという不満に気づかせたい」と設定したとしましょう。
しかしこれだと、、、
役3はそんな嫌味に気づくわけでもなく「あ、ねぇ空見てみて。」と言い放ち、役1の嫌味は失敗(邪魔)に終わります。
失敗したということは、目的の変更が起きます。
役1の「夜空を見て感動してるのは3だけだと気づかせたい」(夜空がきれいだなんて当たり前なんだよ)という目的をもって「湿度と気温が低いし・・・」とまたも嫌味っぽく言ったとしましょう。
役1の目的:夜空を見て感動してるのは役3だけだと気づかせるために
役1の言動:湿度と気温が低いし、今日は月もでてないからねと言った
続いて、役1が「うん。きれいだね。」と発言します。
役1を、2回も嫌味をふっかけようとしていた役1が、とつぜん、ロマンチックな表情に切り替わって「うん。きれいだね」なんて言うと思うでしょうか?想像しづらいですよね。
あるとすれば「うん、きれいだね、、(ちっ、こっちは早く帰りたいっつーの)」という、そっけない生返事のようなセリフになるはずです。
どうでしょう?こんな想像をすると、役1がだいぶ嫌味キャラになりましたが、別にこれでも物語は成立すると思いませんか?
しかし不思議なもので、演技レッスンをすると、こんなふうに「役1を嫌そうな顔で”ウンキレイダネー”」と演じる人はなかなかいません。
表面上の「言葉」をなぞってしまうと、「うんきれいだね(きれいだなぁっていう表情をする)」だけで終わってしまいます。
しかし、言葉ではなく目的をなぞることで、お芝居はこんなにも変わります。組み立てのアプローチがまったく変わるんです。
「すべては目的から出発しなければならない」のはこういう理由があります。
そして、目的に沿った言動を際立たせてあげるだけで、お芝居はものすごく面白くなります。
がんばりましょう!
現実世界だと、たとえば道ばたで酔っ払いのおっさんが独り言を言っていることもあるかもしれませんよね。ああいった独り言に「目的」は無く、はたから見ると得体が知れず気味が悪い・近寄りたくないと思ってしまいます。
逆に酔っ払いでも、「道ばたで女性に土下座している」などの目的があると「気味が悪い」とはなりません。不思議なものですね。もちろん、お芝居では理由もなく「酔っ払いのおっさんがただ登場するだけ」なんてシーンはあり得ません。登場した場合、そこにはかならず目的があります。